サイレント・ピリオド
著名人の方々の中には、著書やテレビ・ラジオ発言以外にもツイッターで発言されている方がいらっしゃいます。そして、その発言はツイッターでのみ紹介しているという場合も少なくありません。
現中学3年生の受験後、脳科学者の茂木健一郎さんのツイートが目に留まりました。全文ご紹介いたします。
努力して成果が出ないときでも、サイレントピリオドの中にあるかもしれず、脳の中では5枚のカードのうち3枚や4枚は揃っているかもしれない。ある時、突然「晴れ上がり」のようにできるようになることもある。報われなくても、努力していること自体を楽しめばいい。努力とは、待つ楽しみなのである。
3月7日 茂木健一郎
まず、サイレント・ピリオドとは、これは言語習得の研究等で使われる学術用語で、直訳すれば「沈黙の時間」となります。例えば、赤ちゃんが言語を習得する際、研究者によると必ず「言語を喋らない期間」が存在するといいます。この期間を「サイレント・ピリオド」と言います。これは、赤ちゃんが言語を自らの口で発する前に、赤ちゃんなりに膨大な言語のインプットがされており、つまりは言語を話すための準備をしているといえます。
このサイレント・ピリオドについて茂木さんは、ツイッターとは別に公式ブログで次のように書いておられます。
第二言語の習得においては、「サイレント・ピリオド」という期間があることが知られている。たとえば英語を学ぶときに、しばらくは周囲で英語を話していても、その話者は黙っている。表面的には、何の進歩もないように見えてしまう。
しばらく何の進歩もないから、英語学習の進歩がないように見えるが、それでもその英語の環境に置いておくと、やがて、ある時期が来ると突然顕著な進歩を見せるようになる。サイレント・ピリオドが終わったのである。
サイレント・ピリオドにおいて、脳内では何が起きているのだろうか。外部へのアウトプットというかたちで進歩が見えなくても、神経回路網には徐々に微小な変化が蓄積しているものと思われる。それがある「しきい値」を超えた時に、顕著な進歩が外在化する。
脳の神経回路網の変化は連続的だから、サイレント・ピリオドにおける変化に比べて、進歩が顕在化した後の変化の方が特に大きいということではない。むしろ、サイレント・ピリオドで潜在的に進行している変化の方が、習得の準備という意味においては実質的である。
言語習得で使われるこの「サイレント・ピリオド」という言葉を知ると、やはり入試前の受験生や定期テスト前の生徒を連想します。
茂木さんも、受験シーズンだからこそ上記のようなツイートをしたのだと思います。
生徒は、定期テストや入試に向けて一生懸命勉強しても、実際に自分の実力がついたのか不安になるときがあります。一方、我々講師側も、生徒にやるべきことをきちんとやらせているにも関わらず、その生徒の学力向上の兆しが見えない時、陰で不安になることもあります。
そう、受験勉強(定期テスト勉強)面におけるこの「サイレント・ピリオド」は、人を不安に引きずり込ませる魔の時間でもあるのです。
こういった不安の声があがることを予見してか、茂木さんはそれに対して「報われなくても、努力していること自体を楽しめばいい。努力とは、待つ楽しみなのである。」とポジティブな表現で解答を与えてくれています。
また、やや難しい表現での解答は、「顕著な進歩が外在化する」前の「サイレント・ピリオドで潜在的に進行している変化の方が、習得の準備という意味においては実質的である」ということになるのでしょう。
茂木さんの言葉から、受験期における我々講師側の心構えの「理論的支柱」を頂いた感じですが、難しいことを抜きにして一番生徒に贈りたいと思った表現は、「努力とは、待つ楽しみなのである」という言葉です。
良い表現です。
すでに、公立高校入試は終わってしまいましたが、合格発表まではまだ数日あります。受験後、複数の生徒が受験の報告をくれましたが、やはりこの「待つ時間」は緊張しっぱなしで嫌だと言っていました。どの子の本心もきっとそうでしょうね。
でも、だからこそ合格発表の瞬間は感動の瞬間でもあるのです。そして「サイレント・ピリオド」が終わった瞬間でもあるのです。
以上、長くなりましたが、ぜひこの数日を「楽しんで待つ」という時間に変えてみましょう。